弁護士の不正による弁護士会の被害者への見舞金給付の件

 弁護士の横領等によって被害を受けた被害者に対して、弁護士会がその被害額の一部を補填する意味合いの見舞金給付を検討しているという。

 弁護士法には、「弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」と規定されており、弁護士の使命は同法により、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」とある。

 弁護士は社会正義を実現することを使命とするから、その弁護士で構成される弁護士会も社会正義を実現することが使命であるはずである。弁護士の不正によって被害を受けた被害者に対して弁護士会が見舞金を給付することは、社会正義を実現しているといえる。

 また、この問題を弁護士会が放置すると、弁護士の監督を国が行うべきいう議論がおこり、実際にそうなりかねない。弁護士が国から監督を受けるということは、国からの人権侵害等に対して、思いっきり戦うことが出来なくなることを意味し、これは、結局、国民の利益にはならず、社会正義が実現されなくなる。

 これに対して、一部の弁護士からは、不正を行ったごく一部の弁護士の賠償責任をなぜ他の弁護士が負う必要があるのかという反論がある。たしかに、法律的には他人の不法行為による責任を関係のない者が負う理由はない。しかし、国民は、弁護士を「弁護士」というひとつの職業グループとしてとらえており、その職業グループに対して信頼を寄せているのである。弁護士はこれまで築いてきた信用のもとにその看板を使って仕事を行っているのだから、その信用を保持するためのものと考えれば、見舞金の給付にも正当な理由があるといえる。

 以上から、弁護士会が弁護士の不正行為による被害者に対して見舞金を給付するこtには賛成でき、むしろ、弁護士会はそうする義務があると考える。

 この論理は、司法書士にもいえることであり、日本司法書士会連合会及び有志の司法書士で構成される公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは弁護士会にならって、この問題を検討する必要がある。